ベンダーの提案書、ハンコを押す前に見る「7つのチェックポイント」
ベンダーから届いた提案書。分厚くて、きれいで、専門用語が並んでいて——正直、どこを見ればいいのか分からないまま、なんとなく「よさそう」で判断していないでしょうか。
私は以前、ITツールを「売る側」にいました。だから白状します。提案書には、発注者が気づきにくい“盛られやすい場所”が、いくつも存在します。悪意ではなく、売る側の立場なら当然そうなる、という場所です。
一度、基幹システム更新の案件で、開発ベンダーから届いた提案書を見て、言葉を失ったことがあります。注意事項はスカスカ。書いてあるのは「弊社は責任を負いません」という免責のメッセージばかり。お客様のために書かれた提案書では、まるでなかった。ベンダーが守っていたのは、お客様ではなく、自分たちの身でした。しかもそのお客様は、乗り換え費用が出せず、そのベンダーから離れられない——弱みを握られていたのです。
今日は、ハンコを押す前に必ず見てほしい7つのポイントを、順番にお渡しします。これはあなたが自分を守るための“ものさし”です。
1. 「誰が、実際に使うのか」が書かれているか
一番多い失敗が、これです。機能はたくさん載っているのに、「現場の誰が、いつ、どの画面を触るのか」が曖昧なまま話が進む。使う人の顔が見えない提案は、ほぼ確実に「入れたのに使われない」になります。
2. 初期費用に“何が含まれ、何が別料金か”
「導入費用一式」——この“一式”がくせものです。データ移行は含まれているか。初期設定は。研修は。別料金の項目が後から次々出てくるのは、よくある話です。「この金額で、どこまでやってもらえますか?」と一度で聞いてください。
3. 「継続してかかるお金」が見えているか
提案書は初期費用が目立ちますが、本当に効いてくるのは月額・保守・追加開発の継続コストです。3年、5年使ったら総額いくらになるのか。ここを計算せずにハンコを押すと、あとで効いてきます。
4. 乗り換えられるか(囲い込みの度合い)
いざ「合わなかった」となったとき、別の製品に乗り換えられるのか。データを持ち出せるのか。特定ベンダーにしか触れない作りになっていないか。
さっき話した、免責だらけの提案書。あれが平然と出てくる背景には、この“囲い込み”があります。乗り換え費用を出せないと分かっているから、強気に出られる。人質を取られた状態では、どんな提案でも飲むしかなくなる。だから、契約する前に“出口”を確認しておくことが、あなたの最大の防御になります。
5. 「入れたあと」の設計があるか
導入がゴールになっている提案は危険です。運用ルール、定着の工夫、うまくいっているかを測る指標——「1年後も使われている状態」までの設計があるか。ここが空白なら、それはあなたの宿題として残ります。
6. 比較・代替案が示されているか
一社の提案しか見ていないなら、それは「比較」ではありません。「なぜ他の選択肢ではなく、これなのか」が説明されているか。代替案に触れない提案ほど、疑ってかかるくらいがちょうどいいです。
7. あなたの言葉で説明できるか
最後に、一番シンプルなテスト。その提案を、あなた自身の言葉で、現場や経営に説明できますか? できないなら、まだ腹落ちしていない証拠です。分からないまま進めた投資は、後悔に変わります。
そして、ひとつだけ覚えておいてください。本当に大事な前提や注意事項ほど、提案書の“いちばん最後”に、いちばん小さな字で書かれていることがあります。本来なら最初に握るべき条件を、わざと末尾に隠す。「ちゃんと書いてありましたよね」と、あとで言うために。私は売る側にいたから、その手口を知っています。だからこそ、最後のページまで、目を光らせてほしいのです。
この7つを全部ひとりで見るのは、正直しんどいと思います。だからこそ私は、ツールを売らない立場で、あなたの隣でこの“ものさし”を当てる仕事をしています。手元に提案書があるなら、鵜呑みにする前に、一度いっしょに測ってみませんか。