なぜ、私は“ツールを売らない”のか
「システムを入れたのに、誰も使っていない」——製造業の現場で、私は何度もこの言葉を聞いてきました。
でも、私の胸に今も刺さって抜けないのは、現場の言葉ではありません。かつて私が「売る側」にいた頃、自分がお手伝いして導入したお客様から、3ヶ月後に言われた一言です。
「あなたの熱意に押されて、導入に踏み切った。でも、これだけトラブルが多くて、オペレーションも大きく変えなきゃいけないなら——入れない方が、よかった」
頭を殴られたようでした。その案件は、3ヶ月で解約。それでも契約上、お客様は12ヶ月分のライセンス費用を払うことになりました。私の熱意を信じて、私という個人を信頼して発注してくれた人に、最後にそんな思いをさせてしまった。この一言で、私は決めました。「もう、売る側は辞めよう」と。
私は、いいものを売っているつもりだった
白状します。私は、トップセールスでした。自社製品を本気でいいものだと信じ、クロージングもゴリゴリにやっていた。数字を追いかけ、勝ち取ることに、なんの疑いも持っていませんでした。
でも、製品に詳しくなるほど、解約率の高さから目をそらせなくなった。「余計なものを入れられた」「騙された」——お客様から、そう言われることが続いたのです。悪意なんて、一切なかった。むしろ、いいものを届けているつもりだった。だからこそ、こたえました。私が無知なまま売っていた。その結果が、目の前の解約と、失望した顔でした。
後悔の原因は、システムではなかった
売る側と、発注者側のPMOと。両方の席に座って、はっきり見えたことがあります。多くの後悔は、「システムそのものの出来」で決まってなどいない。原因は、たった二つでした。
ひとつは、「どう使いたいか」という要件の整理不足。もうひとつは、発注者の側に立って冷静に判断してくれる、中立な人がいなかったこと。
ベンダーは、自社製品を売るのが仕事です。それが悪いわけじゃない。売る側なら、当然です。私だって、そうでした。ただ——その提案を、鵜呑みにしたとき。そこから、後悔が生まれる。誰よりも「売る側」にいた私が言うのだから、間違いありません。
だから、私はツールを売らないことにした
もし私が特定の製品を売っていたら、あなたに「それは、御社には要りません」とは、口が裂けても言えません。紹介料をもらっていたら、紹介料をくれる製品をすすめたくなる。人間だから、当たり前です。だから私は、ツールを売らないと決めました。ベンダーからの紹介料も、一切受け取りません。
収益は、あなた——発注者からの支援料だけでいただく。だからこそ、忖度なく「それは、入れない方がいい」と言い切れるのです。
正直に言えば、いまはクラウドやAIを使えば、自分でSaaSを作って月額で稼ぐこともできる時代です。その方が、ずっと楽に儲かる。それでも私は、目先の利益より、あなたの現場が本当に回ることを選びました。日本のものづくりの現場で、これ以上「入れなきゃよかった」を増やしたくないからです。
正しい“ものさし”を、あなたに
私がやりたいのは、あなたの手に「正しいものさし」を渡すことです。この提案は妥当か。この見積は適正か。何を、どの順で入れるべきか。その判断基準さえあれば、あなたはもう、言われるがままに投資して後悔することはありません。
製造業のDXに、もう後悔はいらない。あの日の、あの一言を——二度と、誰にも言わせない。その一心で、私はこの仕事をしています。